第四回
*
「こんな場所で……?」
増田と涼子がやってきたのはビルとビルの隙間にある路地裏だった。いかにも不衛生で饐えた匂いが漂っている。
「最低の場所でロマンチックな初体験ってのも乙でしょ、うふふ」
「そ、そんな……」
涼子は明らかにショックを受けている。
周囲に人気はなかった。
大通りからもかなり距離が離れているし、おそらく誰かが通りかかることはないだろう。
もちろんラブホテルや増田のアパートを使ってもいいのだが、たまにはこういう野外でやるのも刺激的だと思ったのだ。
「それとも、やめる? 自分の人生を破滅させる覚悟があるなら、逃げてもいいよ」
「うう……」
「たとえ警察に捕まっても。自分の純潔のほうが大切なのかなぁ、涼子さんは」
「くっ……!」
涼子は震えるほど強く唇をかみ締める。
彼女が自分の処女性にどれくらいの価値を覚えているのかは分からないが、いくらなんでも身の破滅と引き換えにはしないだろう。
最初からそれを頭に置いた上で、増田はじっくりと言葉で責めていく。
「僕みたいなデブオタが初めての相手で悔しい? ねえ、悔しいよねぇ。なんなら、逃げてもいいんだよ。プライドを守って警察に逮捕されるのもまたよし、ってね」
「あなた……最低よ」
「それがどうかしたかな?」
増田はどこ吹く風だ。以前のように気圧されることはない。
「さ、脱いで。処女のヌードを拝ませてよ。ま、もうすぐ処女じゃなくなるんだけどねぇ」
「…………」
「脱いでって言ったんだよ。聞こえなかった?」
「わ、わかったわよっ」
涼子は半ば自棄になったかのように叫んだ。
キッと増田をにらむと、胸元に手をかけボタンをひとつひとつ外しはじめる。震える手つきでスーツを脱ぎ落とし、スカートに手をかけた。
そこで硬直する。
整った顔立ちに躊躇の色が浮かんでいた。
「…………」
涼子はうつむいたまま動かなくなる。こめかみに薄く血管が浮かび、ぴく、ぴく、と震えている。
「どうしたの? 手が止まってるよ」
増田がさらなる脱衣を促した。
じわじわと獲物をなぶる過程を愉しんでいた。かわいそうという気持ちよりも、征服感のほうが圧倒的に強くなっていた。
貪りつくしてやる、と心の中のどう猛な部分が顔を出していた。
「っ……!」
涼子は小さく、叫びにならない叫びを上げた。震える手つきでスカートを取り去り、さらにブラウスも脱ぎ去った。
すらりとした肢体を包むのはもはや下着だけだ。二十四歳の乳房がぷるんっと揺れる。余分な贅肉を感じさせない、引き締った女体。
「ぬ、脱いだわよ」
「脱ぐってのは全部脱ぐことだよ。わかる? ヌードなの、ヌード。下着姿くらいじゃ脱いだとはいえないなぁ」
「いいかげんにして!」
その瞬間、増田は頬に衝撃を感じた。涼子が目にも止まらぬ速さで平手打ちを放ったのだ。
「痛たたたた……!」
増田は顔をしかめて、打たれた頬をさすった。スナップの効いた一撃を食らい、電流のような痺れが走っている。
「罰ゲームだよ。キスして、涼子さん」
「えっ?」
「罰としてファーストキスをもらうよ。君のほうから僕にキスするんだ」
「なっ、なんで──」
「君に拒否権はないんだよ」
増田は蛸のように口を突き出した。
涼子は呆然とした顔で立ち尽くしている。
処女だという話だったが、どうやらキスの経験すらないらしい。これから彼女のすべての『初めて』を奪えるのだと思うと、それだけで胸が激しく高鳴る。
二人の視線がからみあい、沈黙の濃度が増した。
重苦しい沈黙だった。
増田は余裕の、そして涼子は焦燥の表情を、それぞれ浮かべている。
やがて静かな空間に物憂げなため息が聞こえた。
涼子は決意を固めたのか、ゆっくりと歩み寄った。全身を震わせながら、そっと顔を近づける。
ちゅっ……
小さな音を立てて、増田と涼子の唇が触れ合った。良質のグミを思わせる柔らかな感触に陶然となった。
(こんな綺麗な女のファーストキスを奪ったんだ)
増田は心の中でガッツポーズを作る。胸がカッと熱くなった。
目を開けると、涼子の美貌が悔しげにゆがんでいた。いかにも嫌々ながらにキスをしているといった様子だ。
増田は調子に乗って、舌を差し入れた。
ぬちゅ、ぬちゅりっ……!
「んぐっ!?」
涼子がくぐもった悲鳴を上げる。
舌まで入れられるとは予想外だったのだろう。ぬめぬめとした舌で彼女の口内を嘗め回すと、涼子はあわてて顔を離した。
「はあ、はあ、はあ……き、汚いわ……!」
「なんだよ、今のが君の初キスだったんだよ。もっと喜んでくれてもいいじゃない。うふふ」
「くっ……!」
涼子は顔を真っ赤にして拳を握り締める。先ほどと同様、今にも殴りかかってきそうな気配だ。
「おっと、君には拒否権がないって何度言わせるのさ。可愛い弟さんを『犯罪者の弟』にしたいのかな?」
「──!」
彼女の顔色がはっきりと変わった。
すべてを、観念した表情へと。
「わかった……わよ」
涼子は諦めたようにブラジャーを外し、ショーツも乱暴に脱ぎ捨てた。増田の目の前に、一糸まとわぬ処女のヌード姿が披露される。
「ふーん、思い切りがいいんだねぇ。いままで、君が処女だったのが不思議なくらいだよ」
増田はじっくりと彼女の裸身を視姦した。バージンピンクの乳首も、濃い目の黒いヘアもすべてが夜の明かりに照らされている。
「あ、あなたも……早く脱いだらっ……!」
涼子が声を震わせる。いくら強気な態度を装っても、やはり生まれて初めてのセックスに対して緊張しているのだろう。
増田は洗いざらしのズボンを脱ぎ捨て、屹立をあらわにした。純白の裸身を前に、増田のものは十分にそそりたっている。
「ほら、そこの壁にもたれかかってよ。アソコを突き出すようにして、さ」
涼子は命令どおり、硬いコンクリートの壁面にもたれかかった。直立不動で下腹部を軽く突き出すようにする。
増田は息も荒く、正面から処女の裸体を抱きしめた。
「ひっ、嫌……!」
涼子の顔がたちまち嫌悪感に染まった。
「あれ、やめるの?」
増田が彼女の顔をのぞきこむと、たちまち抵抗がやむ。脅迫ネタの威力はやはり絶大だ。
「ふふ、続行だね」
ぶよぶよと脂肪質な腕が細くしまった腰を抱え込んだ。
生まれて初めての体験を前に、涼子は緊張で身を固くしているようだ。
もっとも増田自身も三人の女性経験があるとはいえ、処女を抱くのはこれが初めてだが。
(うまく入るかな? 処女って痛がるらしいけど)
不安が、一瞬胸をよぎる。
「処女をもらうよ。いいね?」
「い、いやよ……!」
彼女の最後の、抵抗。
増田はいやらしく笑うと再度たずねた。
「処女を貰ってください、だろ」
「…………」
「ねえってば」
「す、好きにしなさいよっ」
「うふふふ、素直じゃないんだから」
増田は腰を揺すりながら相手の腰に近づけていく。立位のまま上手く照準をあわせていく。
反り立ったペニスを初々しい肉のくぼみにあてがった。
「抵抗をやめたね。それじゃ、いよいよ──」
腰をグッと押し沈めると、屹立したものがピンク色の花唇を丸く押し開いた。
「んっ……あっ!」
涼子が先ほどまでの強気な態度とは一転して、可愛らしい悲鳴を上げた。
まるで女子高生のように初々しい悲鳴。
増田はぐい、ぐい、と体重をかけていく。一度も異物の侵入を許したことがない胎内に、男の分身が容赦なくねじこまれていく。
「キツいね」
思わず顔をしかめた。
処女の膣とはこれほどまでに窮屈なのか。ペニスを押し進めるだけで一苦労だ。新鮮な柔肉を引き裂くように、少しずつ体を押し込んでいく。
「ううっ……!」
涼子は眉間にしわを寄せ、苦しそうな声をもらした。
「ほら、もう少しだ。リラックスして、体の力を抜いて」
二十四歳にして純潔を失おうとしている彼女を、増田が優しくリードする。花弁を奥に押し込むようにして涼子の中にペニスが入っていく。
やがて処女膜を突き破った。
次の瞬間、増田のペニスは根元まで涼子の膣に包み込まれていた。体の奥深くまで貫き通され、伸びやかな女体がわななく。
「ふう、キツキツだね。奥まで入ってるのが分かる?」
増田は自分の正面であえぐ女体を見つめた。
「あ……は」
涼子の口から小さなため息がもれた。
「どう? バージンじゃなくなった感想は」
狭い入り口を左右に押し広げ、たくましい肉根が涼子の膣口に没入している。結合部から薄く血がにじみ、聖女のしるしが破られたことを示していた。
自分が涼子の初めての男になったのだという事実に、増田は感激していた。
これから先、彼女が何人の男と付き合うのかは知らないが、涼子の未来の彼氏たちはみんな、自分のことを意識するだろう。
愛する彼女の、処女を奪った男として。
冴えないデブオタであるこの自分を。
「これから本物のセックスを教えてあげるからねぇ」
増田が腰を揺り動かし、性急なピストン運動が始まった。
ぐちゅ、ぐちゅ。
湿った音を鳴り響かせ、汚らしいペニスが処女の肉洞を出入りする。
「痛い……痛いのよ。もう抜いてェ」
太った体に組み敷かれながら、涼子が別人のように弱々しい悲鳴を上げた。
「へえ、やっぱり初めてって痛いんだね」
増田は腰の動きを止めた。開通されたばかりの膣ヒダが、己の中に食い込んだ異物を強く挟みつけてくる。こちらまで痛いくらいに、ギュウギュウと増田の肉柱を締め付けてくる。
「これが……処女か!」
圧倒的な快美感に天井を仰いだ。
「この締め方は堪らないね。さっきまでは男を知らなかったのに、もう違う体になっちゃったんだね、涼子さん」
喜々としてピストン運動を再開する。
「痛い……もっと、ゆっくり……」
バージンを失ったばかりの涼子は顔をしかめて嘆願した。ぶよぶよと太った体に組み敷かれ、処女だったOLの裸体が揺さぶられる。
さらに増田は彼女の二度目の口づけを奪った。
「んっ……!」
涼子は真っ赤になって顔を背けた。増田はなおも唇を突き出し、二度三度と、執拗に彼女の唇を奪いにかかった。
あきらめたのか、やがて涼子は相手のキスを受け入れた。
「くっ……あんっ……」
秘めやかに喘ぎながら、二人は濃厚な口づけを交し合った。ディープキスを続けながら、彼は腰の勢いを加速させる。
「痛い、駄目ッ! 痛いっ!」
やはり痛いのか、涼子はすぐに悲鳴を上げた。
熱いものを体いっぱいに打ち込まれ、その圧迫感に顔をしかめている。ぐいぐいと下腹部を押し込むと、丸く押し開かれた花孔からじわり……と血がにじんだ。
「お願いっ……本当に痛いのよ」
初体験の痛みに耐えている涼子が可愛くてたまらない。
増田は相手の顔といわず、首筋や胸元といわず、チュッチュッと口づけを浴びせかけた。
腰の動きを止めて、涼子のバストに手を伸ばす。
ツンと張り詰めた乳房は多少硬い感触がした。ぐっと五本の指を食い込ませると、心地よい弾力が伝わってくる。
片手で彼女の胸を愛撫しながら、もう一方の手を結合部へと伸ばした。
二人が繋がりあっている部分よりも少し上……充血した肉芽をこりこりとつまみ上げる。
羞恥心かそれとも快楽なのかは分からないが、涼子の頬が赤く染まっていた。
(そろそろいいかな……ついでに別の体位も試してみるか)
増田は涼子の中からいったんペニスを抜き取った。硬いコンクリートの壁と向かい合わせ、背後から挿入しようとする。
「こ、こんな姿勢で……んっ!」
彼女が抵抗する間もなく、野太いペニスが血で染まった秘孔に押し込まれた。インサートも二度目だけあって、破瓜のときよりも随分とスムーズだ。
立ちバックの態勢で根元まで挿入すると、増田はピストン運動を再開した。
じゅぽっ、じゅぽっ!
水っぽい音が路地裏にこだまする。
処女だった膣穴は、先ほどより少しはこなれてきたような感じがする。増田は徐々に抽送のピッチを上げていった。コンクリートの壁と増田の太った体に挟み込まれ、涼子の体が大きく揺さぶられる。
「嫌っ、駄目、駄目え!」
涼子が許しを請うように腰を左右に跳ねさせる。そのたびに増田のものは一層深く埋め込まれ、結合を確かなものにする。
「許してっ、あああっ……!」
ただ揺さぶられる肉人形と化した涼子を背後から押さえつけながら、増田のほうも射精感が高まってきた。
痺れるような快楽を背筋のあたりに感じながら、抽送を一気にスピードアップさせる。
「あっ……くっ……ううっ……」
いままで以上に激しいピストンを浴びせられ、涼子はかすれた声で喘いだ。増田は背後から彼女の胸を揉みしだき、首筋に唇を這わせた。
「やっ……ああっ……んっ!」
苦痛とも快楽ともつかぬ感覚を味わっているのだろうか、彼女の顔が薔薇色に上気している。
眉がきつく寄せられ、増田への嫌悪感をあらわにしている。
相手は処女だし、いきなりエクスタシーまで味あわせるのは無理かもしれない。ここいらで終わりにするか──
増田はすらりとした両脚を脇に抱えこみ、根元までペニスを打ち込んだ。
「膣でイクよ、いいね!」
言うと、相手の了承も待たずに腰の動きを止めた。
避妊などしない。するつもりもない。
どう猛な征服欲にかられ、増田はストロークを加速させていった。
せっかく処女相手に生ハメしているのだ。どうせなら中出しでフィニッシュして思う存分征服感を味わいたい。
まだ誰の精液も侵入したことのない胎内に、己の子種を植えつけてやる。
「出すぞ、ううっ!」
増田は雄たけびを上げて、涼子の膣におびただしい量の精液を注ぎ込んだ。
どくどく、と肉棒が脈打ち、汚れを知らなかった処女の膣に男のエッセンスをまき散らす。
「ふう。初めてにしてはなかなかだったよ、涼子さん」
肉棒を引き抜くと、今まで繋がっていた部分からドロリと白い液体があふれてきた。
涼子の中にたっぷりと注ぎ込んだ子種が逆流しているのを見て、増田は愉悦に浸った。
後は彼女が妊娠していないことを祈るばかりだ。
涼子は無言のまま、壁に体を預けている。
座り込むことすら忘れたように、呆然と息を吐き出している。虚ろなまなざしは処女を失ったことによる虚脱感だろうか、地味ながらも整った美貌は完全に色を失っていた。
「終わったの……?」
涼子はゆっくりと振り返り、かろうじてそれだけを口にする。
乱れた髪が一本、汗で口元にへばりついていた。女になったばかりの表情が異様なほどエロチックだった。
『脅迫ネタお届けします3』の連載はここで終了です。
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