第三回
*
──潔癖な性格が覆い隠されてしまうほど、すでに酔いがまわっていたのだろう。早苗は誘われるままに増田のにアパートに入った。
部屋に入るなり、増田は早苗の胸に手を伸ばし、乱暴にまさぐった。
小柄な体には不釣合いなほど豊かな乳房。二十二歳のバストの、ゴムまりのような感触が両手に心地よかった。
「やめて、冬彦くん」
早苗がかすかに首を振る。この期に及んでも、まだ彼氏に操立てする気持ちが残っているのか。
増田は彼女の首筋に、ぶちゅ、と音を立ててキスをすると、ふたたびボリュームのある双丘を揉みしだく。
「んっ……!」
早苗はかすかに眉をしかめた。可愛らしい顔が紅潮しているのは、どうやら酔いのせいばかりではないらしい。
「そういえばさっきは聞きそびれたけど、早苗ちゃんってエッチの経験はあるの?」
「…………」
「答えないってことは、ないのかな? 彼氏がいるからてっきり非処女だと思ってたけど。いまどき奥手なカップルなんだね」
「…………」
「恥ずかしがることないよ。僕、この間二十四歳の処女とヤッちゃったし」
「初めて……だよ」
早苗は絞り出すような声で答えた。
「初体験を他の男に捧げるなんて、きっと彼氏も嫉妬してくれるね」
「あたしは……」
「彼氏だって今ごろ、別の女とヤッてるさ」
「言わないで……」
栗色の髪が悲しげに揺れる。
「もう、どうでもいいよ」
増田が彼女の顔を振り向かせ、愛らしい唇を塞いだ。
「んむっ!」
突然キスを奪われ、早苗は目を白黒させた。唇をこじ開け、分厚い舌をぬめりこませる。
激しく舌をからませ、唾液を注ぎ込んだ。早苗は顔をしかめながらも、どくっ、どくっ、と注がれる唾液を飲み込んでいく。
最後の一滴まで相手の口に唾液を注ぎ込み、増田はようやく早苗の唇を解放した。
「どう? 彼氏ともこんなキスしてことないでしょ」
「はあ、はあ……」
唇を半開きにして、早苗は増田を見上げている。魂まで奪われたかのような虚ろな顔だ。
と、ふたたび増田が花のような唇を奪いにかかった。ぶちゅり、と下品な音を立て、早苗の口を吸いたてる。
「んっ、んんっ……」
激しいキスを続けたまま早苗の体を押し倒す。鼻息を荒げ、乱雑に彼女の服を脱がせていく。下着姿にされ、これから何が行われるのかを悟ったのか、彼女の身が固くなった。
「あ、あの、あたし、やっぱり……」
歯ががちがちと震えている。
「ここまで来て、いまさらダメとは言わないよね」
「あたしは──」
早苗が口ごもる。
「だって、初めてだし」
相手の口から飛び出した処女宣言に、あらためて増田の欲望は燃え上がった。
獣欲が、征服欲が、下腹を突き上げ、荒々しい気持ちを呼び覚ます。
この可憐な娘の『初めての証』を奪ってやりたい。
汚してやりたい。
男という生き物が原始の時代から持つ、猛々しい衝動だった。
「太一くんは君を裏切ったんだよ。君には復讐する権利があるはずさ」
増田はぶよぶよと太った体を押し付けるようにして、小柄な体を抱き寄せる。
早苗は眉をしかめて顔を背けた。増田はあらわになったうなじにチュッチュッと短いキスを何度も浴びせかけた。
「彼氏を嫉妬させて、離れていった気持ちを取り戻すんじゃなかったの?」
噛んで含めるように説明する一方で、彼女の首筋だけでなく頬や額、そして唇にまで何度も何度もフレンチキスを繰り返す。
まるで催眠術のように、幾度も幾度も同じ言葉を刷り込ませていく。
「君にはもう、他に手立てはないはずだよ」
「……った」
早苗が小さく告げた。
「ん?」
「わかったわよっ。どうせ……先に裏切ったのは太一くんなんだし」
早苗は投げやりな表情で答えた。
「それに……あたしだって子供じゃないもの」
「それでこそ大人のおんなだねぇ。そうこなくっちゃ」
増田はほくそ笑んで彼女の両足を開いた。両足の付け根に美しい桜色に輝く性器がある。
「君の恋人には悪いけど、僕がいま男の味を教えてやるからな」
太った体でのしかかり、増田が早苗の股間に手を伸ばす。盛り上がった肉の丘にそっと指を這わせた。
強く、弱く、また強く……一定のリズムをつけ、繊細なタッチで乙女の秘部を愛撫する。
さらに秘唇の上部にある肉芽をこねくりまわすと、早苗は耐え切れないように甘い喘ぎを漏らした。
「やっ、ああっ……」
「どんな感じ? ここを男に撫で回されるのは」
「く、くすぐったいよ」
「うふふ、自分で慰めたりしてたんだろ」
「言わないでよ、そんなこと……ああっ」
じわり、と秘唇が湿り気を帯びてきた。感じているのだ。増田は太い指を秘孔に差し入れた。
指などで処女を破らないよう、少しずつ少しずつ慎重に差し込んでいく。
肉洞の途中で、狭まった輪っかのような感触があった。
「これが処女膜か」
以前に涼子のバージンを破ったときは、いきなり挿入したため処女膜の感触を味わう余裕もなかった。
今日はじっくりと味わってやる。そんな気持ちをこめて、増田は丹念に指での愛撫を繰り返す。
さらにいきりたった男根を瑞々しい処女の割れ目に押し当てた。
くちゅっ……
わずかに湿った水音が鳴り、増田の興奮を高める。
このまま力ずくで押し込んでやりたい誘惑を、必死で押しとどめた。
まだ挿入するつもりはなかった。せっかくの貴重な処女だ。じっくり味わわないと勿体なかった。
「どう、早苗ちゃん。これが君の中に入るんだよ」
「おっきい……」
うわごとのような口調で、早苗がつぶやく。
可憐な顔は早くも紅潮していた。羞恥と官能に染まった美貌は、可愛らしい童顔を妖艶に見せていた。
「すごい……すごいよ、冬彦くぅん」
鼻にかかったような声でつぶやく。つぶらな瞳がとろん、と潤み、心なしか、彼氏に対する罪悪感も薄れているように見えた。
生まれて初めて異性の性器と己の性器が接触し、感情が昂ぶっているのだろう。
つーっとクレヴァスをなぞるようにして、亀頭部を滑らせていく。
先走りの液と彼女自身の愛液が交じり合い、ぬちゅ、ぬちゅ、と淫靡なハーモニーを奏でた。
「あ……ああ……」
おそらく自慰のときでも、これほど丹念な愛撫はしないに違いない。乙女の秘部への、度重なる刺激に早苗はもどかしげな声を上げた。自ら腰をよじり、浅ましく快楽を貪ろうとする。
「気持ちいい、早苗ちゃん? 感じてるんだね」
「え、ええ……」
早苗は顔を赤らめてうなずいた。
「気持ちいい……気持ちいいよ、冬彦くん……!」
「じゃあ、そろそろ入れようか」
股間の中心部に堅いものをあてがうと、早苗はこくん、とうなずいた。
赤黒い亀頭が肉の合わせ目を押し開くと、先端部が潜り込んだ。
「あ!」
早苗が目を見開いて叫んだ。
いくら十分に濡れているとはいえ、やはり男根を挿入されるの圧迫感は相当のものなのだろう。
ぐっと力を込めて、増田が腰を突き出す。男根が早苗の肉孔にゆっくりと押し込まれていく。
肉茎はやがて秘孔の行き止まりで止まった。処女の障壁が、それ以上異物が侵入するのを拒んでいた。
「いいかい? 君の恋人より先に、僕が処女をいただくよ」
「き、来て……」
「よーし、おとなの女にしてやるっ!」
増田は息を詰めて、腰を前進させた。狭いドーナツ状の輪っかを無理やりに押し通す感覚があった。
処女膜を、通過したのだ。
「あっ、あああああっ……」
早苗のかすれた声が断末魔のように響き渡る。やがて増田は、処女の肉体の奥深くまで完全に挿入した。
「はぁぁっ!」
根元まで貫いた瞬間、早苗が絶叫した。今までで一番大きな叫び声だった。
「奥まで入ったよ、早苗ちゃん。どう、男のモノが体に入った感触は?」
「なんか、ヘンな感じ……あんまり痛くないけど、お腹の奥が熱くって……」
早苗は唇を震わせた。
増田もまた処女の肉壷を存分に味わっていた。涼子のときと比べても、一段ときつい。
ペニスを食い締められ、絞られる感触は、至福の一言に尽きた。
(やった。僕が早苗ちゃんの初めての男になったんだ!)
絶叫したいほどの征服感に酔いしれる。すぐにピストン運動に移りたかったが、キツすぎて腰を動かすのも難儀するほどだった。
と、
「太一……くん……」
不意に、早苗がつぶやいた。半開きにした唇がわなわなと震えている。
「おや? 今ごろになって後悔してるの?」
増田がにやりと笑った。
かわいそうだとは思わなかった。何人もの女を脅し、征服してきた彼にとって、いまや女の悲哀は興奮を増すスパイスでしかなかった。
「あたし……初めては太一くんと、ってずっと思ってたのに……」
早苗の顔は真っ青だった。自分が経験したことの重大さに、今になって気づいたかのように。
「でも、もう遅いよ。君の体に初めて入ったのは西浦君じゃなく、この僕なんだ」
「あたし……どうして、こんなことを……ああ!」
早苗は白い喉を見せ、顔を覆った。処女を失い、悲嘆にくれる彼女に増田は追い討ちをかけた。
「もう一度言うよ。君の処女を奪ったのは、この僕──
僕なんだ。
ようく覚えておきなよ。ロストバージンは一生の思い出なんだからね」
「一生の……思い出」
早苗のつぶらな瞳にみるみる涙がたまっていく。
(これだよ、これ。この反応が見たかったんだ)
清純なバージンの体に男の証しを刻んだ征服感で、増田の心が満たされる。
(やっぱり処女を奪うってのは格別だね)
にやりと笑うと、ゆっくりと腰を上下させ始めた。
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